勝ってはいけない馬主の経済学

  サラブレッドは年間約8000頭近くが生産され、競走馬としてJRAに登録されるのは約4000頭弱です(農林水産省生産局資料による=PDF)。年間開催されるG1レースは24レースです(2007年度)。障害レースやダービーなどの馬齢戦も含まれていますから、実際に1頭の馬が挑戦できるレース数はもっと少なくなります。頂点に立てる馬は24/4000としても0.6%に過ぎません。ほとんどの馬は条件馬あるいは未勝利馬として競走生命を終えます。

 馬主にしてみても、当然より高いクラスを目指したいとは考えていますが、1億円投資しても頂点に立てる確率は低いでしょう。まして200万円で購入した馬が頂点の舞台に立てる確率は極めて低くなります。アドマイヤやフサイチのオーナーのような大馬主であれば1頭の駄馬には拘りませんが、そうでない馬主は資金の回収に拘ることになります。

 資金回収の方法としては2つあります。ひとつは着賞金を狙うことです。どのレースでも5着までは確実に賞金が出ますので、これを獲得するのが一番です。もうひとつは、調教師からの情報に基づき、馬券を買うことです。

 例として、アキノパンチという4歳馬を取り上げます。アキノパンチの賞金は2008年6月22日現在4545万円を稼いでいます。馬主にはその8割の3636万円が振り込まれています。入厩がデビューの3ヶ月前だとして2007年1月入厩だとすると、2008年6月までの預託料は1080万円になります。購入代金を除けば2556万円の粗利が出ていることになります。
着賞金を狙う場合は、当然クラスがあがっては行けません。下手にオープンまであがってしまうと、それ以上賞金が期待できなくなる可能性があります。条件戦でよく見られる入着を狙う馬によくある現象です。ちなみにアキノパンチの着度数は3-4-0-1-1-3となっています。賞金が出てないのは3走のみとなっています。

 次に馬券購入について考えてみたいと思います。下図はアキノパンチの戦績ですが、着目していただきたいのは単勝人気と印欄です。印欄には異常オッズの発生度を記しています。これは予想実績でもおなじみにGインデックス順位で、1や★マークは勝負気配が高いと言えます。

 戦歴を順に追っていきます。未勝利戦の直後の2007/4/28はGインデックスが1位となり、明かな異常投票が認められましたが、結果は8着。これは馬主が大金を投入した可能性を示唆しています。その後凡走を何回かした後、2008/2/9に7番人気でありながら、Gインデックス1位の異常オッズが発生しています。このときは2007/4/28と異なり2着に入っています。その後500万条件を連続して2着に入ってます。

 このときのオッズ分析をしてみると驚愕の事実が分かりました。 馬連に異常投票、そして馬単の2着づけに異常投票が認められたのです。つまり、これはアキノパンチが2着になることが分かって投票されています。連続2着の期間は「勝っては行けない。馬主の経済学」ともいえる期間でした。

 その後のアキノパンチは、500万条件を卒業し、1000万条件の賞金を狙いに行きます。昇級2戦目で2着。このときはGインデックス3位と極端な異常投票はされませんでした。着賞金狙いだと判断できます。最後の6月のレースは予定通り500万条件に降級しました。

 馬の戦歴と異常オッズ、そして馬単2着づけの買われ方から、陣営が勝ちに来ているのかが分かります。シンドロームは馬毎の過去の戦歴にオッズ異常歴をつけたものを提供していますので、丁寧に戦歴を眺めれば第2のアキノパンチを見つけることも可能です。

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